走り出したら止まらないぜ

ただの日記です、ベイベー

ごめんねハニー

家に帰ると晩ご飯の支度が遅れていて微妙に時間がありました。
上の娘がぼーっとしていたのでなんかニッチなところを突いてオリンピックで金を目指したら?と振ったら、わかった、と眉間に皺を寄せてこくりと頷いたのです。なにで出るんだ、と聞いたら「んー、じゃボウリング?」

ボウリングなんか上手かったっけとボウリング上手いの?って聞いたら「100いかない」って、さすが親子、僕と同じくらいの下手さだったのです…

ボウリングとはなんなのか。
ぼくのボウリングは既に封印しています。
ただ重い球を転がして棒を倒すだけ、なのにどうしてもあの横の溝に一直線に向かうのです。
しかも毎回力一杯投げるので肩がやられます。 大学の時、あまりに力一杯投げすぎて溝を通り越してお隣のレーンにまで行くのを見て、ああもうボウリングしないなんて言わないよ絶対と固く誓ったのでした。

やるんかいっ!

やりません。しかし!
そんな不甲斐ない父の娘がボウリングで金を目指すと言ってくれたのです。
ボーリングという巨大な壁に打ち砕かれた父の仇を取るが如くバカ娘は立ち上がったのです。
早速二人で研究です。

今から基礎をやっていては到底間に合いません。とにかく逆張りです。ストライクを取ったプロの姿を二人して思い出すのです。

ああでもないこうでもないとの話し合いの結果まず投げたあと手がポヨーンと上下に揺れているのを思い出したのです。そして腰は落とし投げた方の足がピョコっともう一本の足にクロスしていたはずです。
迷惑そうな顔をして邪魔くさそうにハニーが横を通ります。

しかしそれどころではないのです。とにかくその状態に持って行けばストライクを簡単に取れるのではないか。形だ、何事も形が大事だ、とそう結論づけならば二人でやってみようという事になったのですがどちらの足から踏み出すのかが既にわかりませんっ!

しかも何歩歩いて投げるのかもわからない。
ならばいっそ助走なしでいきなり投げればいいんじゃね、という事になったのですが気をつけの姿勢から腰を落としポヨーンと球を投げる格好をしてみるとどうにも足がクロスできないのです。

私もやる!
下の娘も我慢できず参加します。
そうか、姉妹でメダルだ、金と銀だっ!
わはははははは


しかし父は厳しいのです。メダルのために鬼になると固く誓ったのです、今。
そんな事ではダメだっ!と僕が訳もなく真剣に起こったので娘は腰を落とし球を投げる格好をしながら無理やり右足を左足の後ろにクロスさせようとしてその場でコケました。

下の娘もコケました。

いいか、そうじゃない。見ろ、こうだ。と僕の頭に描いた理想の完成図に向けやってみせようとして僕もコケました。

三人は悩みます。
このままじゃいけない…
そして気づいたのです。もう足をクロスして腰も落として完璧にポーズを決めてから手だけで投げればいい、と。

上の娘にやらせます。
ああ、見えないはずのレーンのピンがバラバラと倒れていく様が見えるようです。
完璧でした。
娘達と固く握手をし、東京で金を目指せっ、と声をかけました。
「オリンピックにボーリングないよ」
「知ってる」
「さ、メシ食おう」
ハニーはずっと僕らを見ないふりしていました。
なんにせよひとしきりやって時間が潰れたのでめでたし。


さらばー

ハニーごめん…